FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

2019-01-01から1年間の記事一覧

事業譲渡における従業員の退職給付引当金について

M&Aのストラクチャリングとして事業譲渡を採用する場合、退職金制度の引継ぎがしばしば問題となります。 会社全体から見た金額の重要性は高くなくても、従業員のモチベーションに直結することからマネジメントが重要視しています。 従業員からすれば生活かか…

被取得会社の従業員に発行されているストックオプションの取り扱い

ベンチャー企業の買収を検討する際、従業員に発行されているストックオプションの取り扱いが論点になることが比較的よくあります。 たいていIPOをもって権利確定するものなので、権利行使前に処分されることになります。 ではどのような経緯で処分されるのか…

収益認識基準と消費税

監査法人の会計アドバイザリー業務として収益認識基準の導入コンサルティングが流行っているとか。 JSOX, IFRSに続くブームということでしょうか。 いち会計基準の導入で大袈裟だなと思っていましたが、システム改編も絡む大きな問題のようです。 例えば消費…

持分法投資の減損テスト

持分法投資の減損テストを依頼されるときは減損の兆候ありということなので、かなり慎重になります。 というのものれんと異なり持分法投資は年1回の減損テストがマストではなく、減損の兆候ありの場合のみテストを実施します。 従ってたいてい減損が計上され…

PPAのセグメント別CAC

顧客関係をセグメント別にMEEM(釣果収益法)で評価するケースがあります。 PL項目をセグメント別に分けているのはよく見られますが、CACまで分ける事例は少ないです。 セグメントによって保有している資産が大きく異なる場合、CACの内容次第価値が大きく変…

固定資産の成長モデル

モデリングで固定資産の成長を予測することになりました。 よくある論点は、設備投資もしくは減価償却費を売上比連動で予測するもの。 ただし、その方法が成長と整合しているのかどうかは疑問です。 装置産業を前提とすれば固定資産1単位の獲得収益がほぼ決…

伝統的な商社のバリュエーション

商社といえば最近では海外の資源投資が利益の中心となっていますが、昔はモノを右から左へ流して利ざやを稼ぐビジネスモデルでした。 別の見方をすれば売手と買手の間に入って、売手(商社から見たら仕入先)には短期間で仕入代金を支払い、買手(商社から見…

バリュエーションモデルの葛藤

バリュエーションモデルのテンプレートを作ろうとよく考えるのですが、案件ごとに加工する必要が出てきてけっきょく手間がかかるので諦めてしまいます。 完璧に作ろうとするからテンプレートにおさまらないのであって、ざっくり計算で良いと妥協すれば良いの…

WACCの負債比率

WACCの計算で重要な負債比率。 Debt to Capital、Gearingとも言います。 この比率の基礎を何を使用するかで評価結果が大きく変わってきます。 一般的なのは類似会社平均 評価対象会社に類似する会社の平均を用いることが一般的です。 類似会社の平均水準がそ…

混沌としたロシアを垣間見る

旅行の最終目的地はモスクワ。 とはいってもトランジットでの待ち時間ですが。 明け方の4時ごろ到着し、19時のフライトまでに弾丸で観光してきました。 美味しいロシア料理 正直、あまり期待していませんでした。 ロシア料理は知名度高くないですよね。 しか…

日帰りリスボン

ダブリンから日帰りでリスボンに遊びに行きました。 朝6時のフライトで出発し、深夜1時に帰国。 弾丸でしたがヨーロッパの一大観光地リスボンの魅力を垣間見ることができました。 大行列の世界遺産 リスボンの2大世界遺産として、ジェロニモス修道院とベレン…

パブとミュージシャンの街ダブリン

ダブリンには中央駅のピアノを弾きに行きました。 NHKの駅ピアノという番組が素敵だったので。 思っていたよりもこじんまりとした駅で空いていたので、気兼ねなく弾くことができました。 海外の駅や空港にはよくある光景ですが、ダブリンでは音楽がより身近…

バザールの営業トーク

イスタンブールのグランドバザールを訪問。 ドラマ版深夜特急でサワキが冬物のコートを買った場所。 予想通り売り物は大したことなかったのですが、お店の人たちはとても愉快かつ彼らの売り込み姿勢は勉強になりました。 呼び込みが重要 売り物は似たり寄っ…

カッパドキアの歴史背景とお金事情

トルコのカッパドキアに行ってきました。 奇岩や気球のきれいな眺めで有名ですが、キリスト教の隠れ処としての歴史を知ることでより味わい深い観光ができました。 キリスト教徒の迫害 カッパドキアはトルコ国内のキリスト教とが迫害を逃れて隠れ住んだ場所と…

Europe(旧)とAsia(新)のミックス

ひとつの国(都市)で旧い文化と新しい文化が混じり合うという話はよくありますね。 東京23区の東側と西側、旧市街と新市街など。 イスタンブールではここにさらにEuropeとAsiaという軸が出てくるので面白い。 Europe側ではガラタ橋を挟んで南側が旧市街、北…

イスタンブールのモスクを訪れて感じた調和

トルコ イスタンブールのモスクを訪れて、その精緻な作りに圧倒されました。 さらにはその成り立ちについての奥深いストーリーを知ることで、ますます好きになりました。 シンプルで美しいブルーモスク イスタンブールのモスクで1番人気のブルーモスク。 比…

海外旅行のホテル

海外旅行ではホテルに可能な限りお金をかけるべきだと思います。 現在進行中のプライベート旅行で宿泊したRadisson Bullで部屋がスイートにアップグレードされたことで、そのことを実感しました。 心身の回復 海外旅行は移動・観光に体力を使うため、限られ…

DCF法の選定

一口にDCF法といってもその中で様々な手法があります。 よく使われるのは「エンタプライズDCF」「エクイティDCF」「配当還元」あたりです。 事業会社による事業投資のための評価としては「エンタプライズDCF」が一般的。 有利子負債利用によるレバレッジ効果…

バリュエーションモデルのテンプレートは必要か

バリュエーションの現場ではよく話題になります。 M&Aの件数が少なかったころはモデルの作りこみに時間をかけられたので特段不要でした。 むしろいちから作ったほうが理解が進むため、奨励されていたと思います。 個人的には作ったほうが良いと思っています…

債権流動化とバリュエーション

週明けに債権流動化を実施している会社のバリュエーションを提案します。 債権流動化を実施していてもしていなくても実質的な価値は変わらないのですが、 他社と比べて資本構成・営業利益水準が変わってくるのでマルチプルを使用する場合には調整が必要です…

freeeの感想

税務のお手伝いでfreeeに触ってみました。 銀行口座や各種通販サイトと連携して、入出金や取引発生から自動で仕訳が計上される様を見て今更ながら便利だと思います。 外部システムとの連携が進めば、会計上の見積もりを除いて仕訳はほぼ自動計上になるのでし…

奥さんがもたらす変化

同僚と飲んでいて、結婚したことで何かしら自分に変化があったという話になりました。 後輩は性格がまるくなったそう。 小さい頃から格闘技を習っていたせいか、結婚前はまわりの人間に対して競争意識が強すぎて尖った性格だったらしい。 道を歩いていても警…

ベンチャー企業に転職する会計士の年次

インチャージ経験したあたりがボリュームゾーンかと思います。 レイターステージでの内部統制構築や監査対応は、インチャージとして監査の流れ・リスクのポイント理解が活きる業務ですので。 一方でFAS会計士の中には修了考査受験前で転職する人もけっこうい…

ベンチャー企業の成長ステージ別に求められる会計士

まわりでベンチャー企業に転職するFAS会計士が増えています。 低金利による金余りで資金調達に成功するベンチャー企業。 IPOを目指してそれまで外注していた経理をはじめとした管理業務を内製化したいとなったとき、会計士への需要が生まれます。 中でもFAS…

マイクロ法人

独立開業するモチベーションのひとつとして、マイクロ法人化したいというのがあります。 個人の会社を立ち上げて、社会保険料を抑制したい。 所得税・国民年金は理解できますが、会社勤めによる厚生年金の強制加入は避けたいなあと思います。 投資効率が悪す…

オプション評価を学ぶ意味

いわゆる金融工学のオプション評価を学んでいます。 バリュエーションの仕事をしていますが、チームにオプション評価の専任がいるので私ができるようになる意味はチームにとってはあまり意味がありません。 それなのになぜ学んでいるのか。 独立開業した場合…

非流動性ディスカウントの判断基準と類似会社の整合(WACC vs Multiple)

同僚から受けた質問が面白かったのでメモ。 ①DCF方式で算定した支配権ベースの価値に非流動性ディスカウントを考慮すべきか? 買い手が100%完全支配の場合は考慮しないことが一般的。 売却の意思決定は買い手の裁量で実施可能だから。 一方で100%未満の場合…

PPAの報告会

1年以上続いた大型PPA案件がようやく完了しました。 今日クライアントへの最終報告会。 PPAの報告会でいつも迷うのは、MEEMとWARAをどこまで説明するかということ。 この2点はPPA特有かつ込み入った論点目白押しで、予備知識の無い方にはかなりの確率で「?…

ベンチャー評価の割引率

ベンチャー企業を評価する場合、類似上場企業を基礎とするCAPMはあまり使われません。 上場企業=成熟企業であるため、成長途上のベンチャー企業とは事業リスクが大きく異なるためです。 そこで実務ではAICPA(米国公認会計士協会)が公表している、ベンチャ…

ベンチャーの資本政策(普通株式と優先株式)

ベンチャー企業のバリュエーション提案を作成しています。 クライアントが普通株式で出資するのか、優先株式で出資するのかで評価手法が変わるのではと悩んでいたのですが、大抵のケースは変わらないとの考えに至りました。 すなわち単純に100%ベースの株式…