伝統的な商社のバリュエーション
商社といえば最近では海外の資源投資が利益の中心となっていますが、昔はモノを右から左へ流して利ざやを稼ぐビジネスモデルでした。
別の見方をすれば売手と買手の間に入って、売手(商社から見たら仕入先)には短期間で仕入代金を支払い、買手(商社から見たら売上先)からは売上債権の入金を長期間留保してあげることにより、資金繰りを支援する金貸し業ともいえます。
仕入価格と販売価格の差分は実は金利収入であると考えられます。
このようなビジネスを行う伝統的な商社をバリュエーションする際はDCF方式がそぐわないケースがあると思います。
例えばメーカーの子会社で親会社の商品を専門的に扱う販社で、親会社への支払を超短期間で行う場合はその実態は金融機関であるといえます。
その超短期間の支払サイトに耐えうるための営業資金を多額の借入金で調達しているとDCF方式で評価する場合ネットデット負担が大きすぎて価値がマイナスになる可能性がある。
このように借入金を運転資本見合いで調達するのは銀行業と近しいビジネスモデルの場合、評価手法も銀行評価に一般的に用いるDDM(配当割引モデル)で評価することで価値をプラスにすることができそうです。
ただし事業会社にDDMを用いるのは実際にマイノリティ出資で配当目的投資の場合が適切であり、ある程度支配権を持って事業を行う投資家を前提とするとかなりイレギュラーです。
実態が金融機関であると認めたとしても、評価手法を第三者に説明するのは苦労しそうです。