FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

研修講師の想像力

研修講師の機会が増えています。 社内向け、社外向け(営業目的)、いろいろです。 受講者にとって良い研修はどんなものだろうかというと、共感してもらうことがひとつのゴールかと思います。 講師の説明に納得してもらうことは比較的容易いです。 整理して…

設備投資によるリターンをCFにどう織り込むか

DCF法の評価で、計画最終年度に多額の設備投資を行なっているけど利益にそのリターンが反映されていない場合があります。 永久成長させる継続期間のCFは計画最終年度をベースにするのが一般的ですが、この場合リターンを反映させずに計算してしまうと価値の…

計画期間中に増資予定の会社のバリュエーション

DCF法で評価する会社が計画期間に増資を行う場合があります。 その資金を投資にまわして成長を見込んでいる。 バリュエーションにてその増資によるキャッシュインをどう取り扱うか論点となります。 増資額がその時点のFair Valueを基礎に決められるのであれ…

DCF vs DDM

バリュエーションのインカムアプローチにおいて、DCF法(FCFをWACCで割り引いて事業価値を出し、有利子負債を差し引いて株式価値を算定)とDDM法(配当を株主資本コストで割り引いて株式価値を直接算定)があります。 どちらも株式価値を算定する手法ですが…

ソフトバンクのAI投資は大勢に異常なしか?

ソフトバンクグループはQ2決算にてWeWorkの減損$3.0bnを計上しました。 ただし一時的なものであり、他の投資銘柄含め成長性に問題ないことを決算発表資料にて説明しています。 面白いと思ったのはこちらのチャート。 成功を収めたネット企業の売上成長率とFC…

楽天のLyftへの投資は本当に儲かっているのか?

楽天のQ2決算でLyft株の減損として923百万米ドルが計上されました。 一方で楽天の決算発表資料をみると、対投資額で見たリターンは高水準であり儲かっている記載されています。 本当でしょうか? 楽天の主張 楽天は以下のチャートでROIおよびIRRが2桁のプラ…

顧問税理士によるM&Aアドバイザリー

中小企業が売却ニーズ(事業承継含む)を持った時、まず相談するのは顧問税理士が多いそうです。 M&Aアドバイザリーとしてのスキルを持つ税理士は少ないかもしれませんが、会社の内情に詳しく経営者から信頼されている強みを活かせそうです。 メインとなる業…

のれん償却期間の実務

日本基準ではのれんは20年以内で償却する必要がありますが、その償却期間はどのように決めるのか議論になります。 会計基準上では、買収される会社に見込まれる超過収益力の効果の発現期間を会社の実態に合わせて決めるとありますが具体的な方法は書かれてい…

バリュエーションモデルの体裁

目的に応じてバリュエーションモデルの体裁を変えるべきという話。 プレゼンテーション目的であれば、なるべく1シートに計算をまとめる。 DCFでいうとP/L売上からFCFまで集計して割引いて事業価値を出して、そこから営業外資産負債・ネットデット調整を経て…

独立と稼ぎとやり甲斐

監査法人時代の仲良い先輩の海外駐在が決まり、先輩の同期中心の壮行会にご一緒してきました。 その世代は監査法人に残っていればパートナー手前ぐらいの世代ですが、一方で辞めた方々のうちけっこうな割合が独立開業しています。 そこで話題になったのが、…

提案書にtableauを用いる

我が社もご多分に漏れずデータアナリティクスに力を入れています。 tableauを使ったビジュアライズもそのひとつで、提案書に用いてみました。 マルチプルのヒストグラムと、マルチプルとROICの散布図です。 操作に慣れるのは苦労しますが、使いこなせれば手…

渋谷の変化を実感

オープンしたばかりの渋谷スクランブルスクエアに行ってきました。 大人向けの街づくりコンセプトに違わない素敵な施設だと思います。 ヒカリエ開業から始まった渋谷再開発ですが、スクランブルスクエア開業で渋谷の中心部は今後駅東側に移ることが目に見え…

存在しないものを想像する力

星野智幸さんの「ててなし子クラブ」という短編小説を読みました。 父親を亡くした高校生たちが父親の話題を想像してお喋りをする、という作品です。 存在しないものがどう振舞うかを具体的に他人に伝えるという高度な想像力に打ちのめされました。 終盤では…

合理的な宗教

代々木上原のモスク「東京ジャーミィ」。 イスタンブール旅行以来モスクが好きになり、日本最大のモスクにはずっと行きたいと思っていました。 運良く館内ツアーのタイミングの入館となり、ガイドの説明を聞きながら鑑賞することができました。 外観はイスタ…

株式譲渡契約のポイント

株式譲渡契約の研修にて。 株式は単なる物ではなく会社そのものであるため、譲渡契約は複雑なものになりがちです。 売手と買手のトレードオフを勘案しつつwin-winで締結できれば理想的ですが、立場が異なるとすり合わせは難しくなります。 完璧に納得行くま…

共同支配企業の形成

ストラクチャリングの検討で久しぶりにガッツリ会計基準と設例相手に格闘しました。 もちろん企業結合と事業分離の適用指針。 P社の100%子会社(A社)を持分法適用会社(B社)に吸収合併させるストラクチャーです。 つまりは共同支配企業の形成ですね。 持分…

J-KISSのバリュエーション

知り合いから、ベンチャー企業の資金調達手段J-KISSのバリュエーションについて相談を受けています。 J-KISSとは、発行価額のみ定めて行使価額と付与株式数を未定とできるストックオプションです。 すなわち付与時の正確なバリュエーションは不要です。 行使…

freeeの自動仕訳

freeeを使った記帳業務を効率化すべく、自動仕訳について調べてみました。 口座取引について、口座名と摘要から勘定科目・取引先・部署などのタグを自動で振り分けられます。 登録は仕訳計上時か、CSVでアップロードするか。 使いこなせば便利そうです。

連結子会社と持分法投資先の減損の違い

連結子会社の減損はまずのれんとPPAで計上された無形資産を落として、その後は個別財務諸表上で有形資産の減損というのが典型です。 一方で持分方投資の減損は資産の区別はなく、投資全体で減損の判定を行います。 これは持分法投資は1つの投資勘定で認識さ…

清算時の債権放棄

FAの仕事の中でもストラクチャリングの検討はとくに面白い。 会計・税務の数字面に加えて、法務や人事といった実務の話も絡んで複雑ですがそれだけ奥深いのです。 業績不振の会社の優良事業を他社にカーブアウトして、残った不良事業ごと清算する案件では、…

事業計画における有形固定資産の見積もり

バリュエーションの基礎とする事業計画でB/Sを作成していない場合によく陥るパターンとして、有形固定資産がマイナス残になることがあります。 価値を上げたいがためにCAPEXを抑える一方で減価償却費を高水準とした場合、B/Sを作ってみると有形固定資産残高…

事業譲渡における従業員の退職給付引当金について

M&Aのストラクチャリングとして事業譲渡を採用する場合、退職金制度の引継ぎがしばしば問題となります。 会社全体から見た金額の重要性は高くなくても、従業員のモチベーションに直結することからマネジメントが重要視しています。 従業員からすれば生活かか…

被取得会社の従業員に発行されているストックオプションの取り扱い

ベンチャー企業の買収を検討する際、従業員に発行されているストックオプションの取り扱いが論点になることが比較的よくあります。 たいていIPOをもって権利確定するものなので、権利行使前に処分されることになります。 ではどのような経緯で処分されるのか…

収益認識基準と消費税

監査法人の会計アドバイザリー業務として収益認識基準の導入コンサルティングが流行っているとか。 JSOX, IFRSに続くブームということでしょうか。 いち会計基準の導入で大袈裟だなと思っていましたが、システム改編も絡む大きな問題のようです。 例えば消費…

持分法投資の減損テスト

持分法投資の減損テストを依頼されるときは減損の兆候ありということなので、かなり慎重になります。 というのものれんと異なり持分法投資は年1回の減損テストがマストではなく、減損の兆候ありの場合のみテストを実施します。 従ってたいてい減損が計上され…

PPAのセグメント別CAC

顧客関係をセグメント別にMEEM(釣果収益法)で評価するケースがあります。 PL項目をセグメント別に分けているのはよく見られますが、CACまで分ける事例は少ないです。 セグメントによって保有している資産が大きく異なる場合、CACの内容次第価値が大きく変…

固定資産の成長モデル

モデリングで固定資産の成長を予測することになりました。 よくある論点は、設備投資もしくは減価償却費を売上比連動で予測するもの。 ただし、その方法が成長と整合しているのかどうかは疑問です。 装置産業を前提とすれば固定資産1単位の獲得収益がほぼ決…

伝統的な商社のバリュエーション

商社といえば最近では海外の資源投資が利益の中心となっていますが、昔はモノを右から左へ流して利ざやを稼ぐビジネスモデルでした。 別の見方をすれば売手と買手の間に入って、売手(商社から見たら仕入先)には短期間で仕入代金を支払い、買手(商社から見…

バリュエーションモデルの葛藤

バリュエーションモデルのテンプレートを作ろうとよく考えるのですが、案件ごとに加工する必要が出てきてけっきょく手間がかかるので諦めてしまいます。 完璧に作ろうとするからテンプレートにおさまらないのであって、ざっくり計算で良いと妥協すれば良いの…

WACCの負債比率

WACCの計算で重要な負債比率。 Debt to Capital、Gearingとも言います。 この比率の基礎を何を使用するかで評価結果が大きく変わってきます。 一般的なのは類似会社平均 評価対象会社に類似する会社の平均を用いることが一般的です。 類似会社の平均水準がそ…