FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

のれん償却期間の実務

日本基準ではのれんは20年以内で償却する必要がありますが、その償却期間はどのように決めるのか議論になります。

会計基準上では、買収される会社に見込まれる超過収益力の効果の発現期間を会社の実態に合わせて決めるとありますが具体的な方法は書かれていません。

 

この点、実務では企業会計基準委員会のリサーチペーパー(のれんの償却に関するリサーチ)が参考になります。

償却期間の決定について4つの要因が挙げられています。

①被取得企業が単独でより高い将来キャッシュフローを維持すると見込まれる期間

②取得企業と被取得企業が結合することにより生じるシナジーが実現する期間

③企業結合にかかる投資の予想回収期間

④識別可能な主要資産(例えば無形資産)の耐用年数

 

①は例えば強固な顧客基盤や優れた技術を持つ場合、その競争優位性が保たれる期間です。

過去から付き合いの深い大口顧客がいるとか、今後市場をけん引するような商品を開発する力がある場合が該当します。

のれんの性質と整合しますが、定量化するのが難しいです。

 

②は取得企業の販路を使用してより長期的に多くのキャッシュフローが稼げるような場合です。

こちらものれんの性質と整合しますが、定量化するのが難しいです。

 

③は投資額に見合った額を累計で獲得できるまでの期間です。

わかりやすい指標ですが、割引前と後で期間が異なるので注意が必要です。

例えば以下のように割引前であれば8年、割引後であれば11年が回収期間となります。

 

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④はPPAで割り当てられる無形資産の償却期間を参照します。

顧客関係・商標などの無形資産の償却期間と整合させる考え方です。

償却期間という概念は同じですが、のれんとそれ以外の無形資産は性質が異なるため一致はしません。

のれんはその他の無形資産よりもリスクが高いため割引率が高くなるため、償却期間は一般的により長くなると思います。

 

実務上は過去の会計処理との継続性も問われることから上記ですべて決まるわけではありませんが、検討の一材料になります。