FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

M&Aの価格交渉

FA業務の中でバリュエーション結果に基づいた価格交渉戦略をアドバイスする機会があります。

その際気をつけている点をまとめてみました。

 

①交渉スタンス

交渉タイプはゼロ・サム交渉(固定されたパイを分け合う交渉)とプラス・サム交渉(パイそのものを拡大させて利益を分け合う交渉)がありますが、

多くのケースは取引相手に対して1回限りの取引となることからゼロ・サム交渉となります。

重要になるのは情報コントロール

最初に相手に伝えるべき情報と伝えるべきでない情報を峻別し、交渉の進捗に応じて小出しにしていくことがポイントです。

とくに重要なのは価格情報。

 

②価格提示

あらかじめ価格のレンジを決めておき、最初は最も有利な価格(売手であれば上限、買手であれば下限)を伝えるのがセオリーです。

ただし極端にふっかけてしまうとやる気を疑われてしまうので、現実的で実行可能なレンジを設定しなければなりません。

そこから交渉する中でお互いに妥協を重ね、最低限受け入れ可能な価格(売手であれば下限、買手であれば上限)で決定します。

 

③価格の前提

提示した価格の前提を開示することで建設的な議論につながります。

DCFで決めたのであれば、まずは事業計画と割引率の水準あたりでしょうか。

あまり詳細に開示してしまうとテクニカルな方向に話が逸れてしまい、本質的なビジネス交渉にならない危険があるので注意しなければなりません。

とくに割引率は考え方次第でいくらでも変動するので、ざっくりしたレンジなどで伝えた方が揉めなくてすみます。