FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

売手目線のカーブアウトPLに共通費をどこまで含めるか

自社の事業をカーブアウトして売却したいと考えたとき、売手はまずカーブアウト財務諸表を作成します。

PLを作成するにあたり共通費の範囲を決める必要がありますが、バリュエーションをどのような観点で実施するかによって変わってきます。

  1. 買手に提示する金額の目安を知りたい⇒共通費のうち共通部門および全社の費用を外す
  2. スタンドアロンバリュー(カーブアウト事業を単独で実施した場合の価値)を知りたい⇒すべての共通費を含める(配賦する)

まず知っておきたいのは共通費には3種類あるということ。

  • 共有費用:他部門と共有している費用(共有の製造設備にかかるメンテナンス費用、減価償却費など)
  • 共通部門費:間接部門で発生する費用(経理部門の人件費など)
  • 全社費用:会社の経営全体に必要となる費用(マネジメントの人件費など)

こちらを踏まえて部門別PLを見てみましょう。

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カーブアウト対象はB事業です。

 

買手に提示する額の目安を知るためには、共通部門費と全社費を差し引く前の営業利益①800までをPLの範囲とします。

これらの費用はB事業をカーブアウトした後に残る売手の会社で継続して発生が見込まれる費用のため、その分も買手に負担してもらおうという発想です。

ただしカーブアウト後に売手の方でリストラして削減可能であれば含めるという考え方もあります。

 

一方でスタンドアロンバリューを知るためには、すべての共通費を控除した営業利益②480までをPLの範囲とします。

事業を営むにあたって経理などの間接部門や経営者の費用は発生するため、これらの費用を含めるという発想です。

 

実務では両方のPLを作成してバリュエーションするのが望ましいと思います。

買手に提示するバリューは当然知ったうえで、売手の社内ではスタンドアロンバリューを持っておいて、交渉でどこまで値下げできるかの目安とすることが有用です。