FAS会計士ハヤマの仕事術

大手監査法人を経て、Big4 FASのバリュエーション部門で働く会計士が呟く仕事術 etc.

ROE偏重経営の是非

日経にROE偏重経営のもろさについての記事が掲載されていました。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO5742458030032020SHA000?disablepcview=&s=5

 

記事の中ではアメリカの航空会社がROEを上げるために自社株買い等でEquityの圧縮を過度に進めたことで、コロナ下で運転資金不足に陥っているというものでした。

従って自己資本比率を高める経営が望ましいという論調です。

Equityの大小にかかわらずCashが枯渇すれば運転資金不足に陥りますが、おそらくEquityが大きい=手元資金が潤沢だと言いたいのだと思います。

 

個人的にはEquityの圧縮は合理的な経営判断であり、今後も続くと思います。

 

まずコロナのような緊急事態に備えて手元資金を増やすことは不合理です。

将来の成長につながる投資もしくは株主に資金を返すのがあるべきです。

100年に一度の危機にビクビクして機会費用を垂れ流すのが正しい経営判断といえるでしょうか。

 

次に航空会社のようにインフラ関連の企業であれば、政府が救済せざるを得ない事情もあります。

経営危機に陥っても政府が助けてくれることがわかっているのであれば、多少過度な株主へのリターンを追求することは合理的です。

この判断はゲーム理論のディシジョンツリーで説明可能です。

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時系列の後ろから見ていくのがポイントです。

①は政府の判断であり、経営危機に陥った航空会社を救済する方が無視して倒産させるよりも政府の利得が大きい(1 > -1)。

従って政府は航空会社を救済するはずです。

遡って②は会社の判断であり、経営危機に陥ったときに政府が救済されていることがわかっていればリスク選好経営の方が保守的経営に比べて会社の利得は大きい(2 > 1)。

 

航空会社は今後もROEを重視した経営を取ることでしょう。

抑制するためには何らか政府が規制を作り、航空会社が保守的経営をとったときの利得を最大化することが必要になります。